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今日は口数がおおい(その1)|11月電子化作品から

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1987年末から1988年始めにかけて書かれた19作品を発売しました。

片岡義男自身が「ハワイ四部作」と呼んでいるものの三作め、『頬よせてホノルル』収録のすべての作品、すなわち「ラハイナの赤いバラ」「冬の貿易風」「アロハシャツは嘆いた」「双眼鏡の彼方に」「ヒロ発11時58分が読めます。ハワイ四部作に共通するのは主人公が「ぼく」という一人称であることですが、ぼく、とはいったい誰なのでしょう。5つの短篇の「ぼく」が同じ人だとも限りません。

ラハイナの赤い薔薇冬の貿易風アロハ・シャツは嘆いた

双眼鏡の彼方にヒロ発11時58分

長編は緑の瞳とズーム・レンズをどうぞ。

政治や経済についての考察がこのように小説になっていることに驚いてください。この小説も主人公は「僕」です。僕と金髪の彼女とが毎月どこかで会い、ふたりだけの会話によって、日本の問題を明確にしていきます。ここで明らかにされている問題は、いまでも何ひとつ解決していないばかりか、さらに悪化していることに気づきます。テーマは深く重いものではありますが、小説としての愉快な魅力もたくさんあります。ふたりの会話でストーリーが進んでいくという構造で、その推進力となっているのは彼女のほうです。片岡さんには『ラストシーンの出来ばえ』というタイトルの角川文庫がありますが、このタイトルそのままに、ラストシーンはすばらしい出来ばえだと思います。

緑の瞳とズーム・レンズ

片岡さんの短編には同じ名前の主人公が出てきたり、登場する女性の造形がよく似ていたり、同じような状況のストーリーがあったりします。読む側からすると、ときに作品がごっちゃになって、あれ?と立ち止まってしまうことがあり、それはそれでとてもおもしろい体験です。でも、読み返してみると、似ていると感じる短編には、どれにも他とはまったく似ていない独自の部分があります。まあ、それは当然のことかもしれないのですが、そここそ片岡さんが書きたかった核心ではないのか。編集業務とはいえ、たくさんの短編や長編を書かれた順に読んでいると、片岡さんによる小説というものの実験性を強く感じるようになりました。ストーリーのなかのちいさなアイディアから、映画評や政治のことなど、あらゆるテーマを小説にしてしまう姿勢まで、実験という意味ではすべてが同等に扱われていることも強く印象に残ります。

片岡義男.comではこんなことを思いながらPCの画面にむかって作業しつつ、同時に『万年筆インク紙』の編集にも関わりました。
その話はまた次のときに。

八巻美恵@編集部

2016年11月25日 05:43