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わたしの片岡義男 No.22片岡サポータ 佐藤公一「ぼくの伯父さん」

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【片岡サポータ】佐藤公一さんは、地方の高校教員を退職した64歳の中年男性。高校時代からカウンターカルチャーへの憧れを持ち、大学時代から退職をした現在まで、読書会というコミュニケーションをとる場所を渡り歩いている。岡崎という町で32年以上続く読書会を立ち上げ、少ない人数だが毎月一回、一冊の本を読んで話し合い、そして飲んで語らう会を持続させている。本人は、ロックとジャズを好み、古本を漁り、最近は傷んだ古書や愛着のある本を造本し直すことを趣味として行っている。

 私と片岡義男との出会いは、1973年8月の『ワンダーランド』創刊号、その冒頭に掲載された「丘の上の愚者は、頭のなかの目でなにを見たのだったか」であった。それは、当時地方都市で大学浪人をしていて、味気ない生活をしていた自分に届けられた「小さな爆弾」ともいえた。ビートルズのヒット曲のタイトルをこのようにアレンジして「ロックの心」を届けようとしているエッセイに共感した。こういう表現方法をして良いのだと。そして、巻末の『ロンサム・カウボーイ』の誌面に驚嘆する。門坂敏之の鉛筆画を全面に使用して、そこへ「新聞紙用の活字」で小説が組まれている。内容より先に、カッコ良いと思った。今まで、雑誌の挿絵の扱いで、このようなスタイルはあったのだろうか。本誌のグラフィックな「斬新さ」は、すでに多くの文章を自分でも読んでいるので、多言を弄しない。自分にとって、この2編の文章との出会いで、片岡義男という作家の輪郭が定められたといって良い。とどめに、本誌の巻末に「あなたのビートルズ論を募集します。」という告知が。これも片岡さんの戦略では? どれほど受験勉強を諦めて、応募しようと思ったことか。


『ワンダーランド』創刊号掲載、『ロンサム・カウボーイ』

 さて、本誌2号で、編集長は植草甚一ではなく、片岡義男なのだと判明する。そして、3号『宝島』と改題して、特別企画「本を読もう!」で、片岡さんは長谷川四郎とわずか2ページの対談をしている。そこで初めて写真で本人を見て、また長谷川四郎を知ることになる。その前書きにある『知恵の悲しみ』のサイン本を、その前後で購入していたこともあって興味深く読んだ記憶がある。その後、上京するたびに友人と古本屋街を巡回するようになったのもこの対談のおかげではないか。さらにその後、片岡さんと長谷川さんの本を読み続けていくことは別のテーマになることだが、45年間二人の本を買い、読み続けてきたのは、この対談がきっかけであったことは確かだと思う。


『宝島』に掲載された対談

 話は逸れるが、毎年楽しみにしている、みすず書房のPR誌の「読書アンケート」が先日届いた。多数の学者や作家さんたちが5点のベスト本を紹介している。他のメディアよりも、目利きの評者によるリストアップは別格だと思っている。そこに昨年末に読んで面白かった福島紀幸『ぼくの伯父さん 長谷川四郎物語』(河出書房新社)が複数の評者から挙げられていた。全集の編者ならではの、すべての著作への行き届いた目配りと様々な評価が過不足なく掲載されている大著である。そして、それは片岡さんの新著『あとがき』(晶文社)にも通じるものを感じている。自分は、購入した本を読む癖として、まず「あとがき」から読み始める。それは、なんとなく「あとがき」に本全体のエッセンスが詰まっているような気がするからだろう。そうして、数々のライフスタイルを片岡さんから教示されてきたことに改めて気づいた。そうかあ、片岡さんは「ぼくの伯父さん」であったのか、と自分なりの納得をするのであった。


当時の雑誌を今でも大切に持っている

元高校教員 佐藤公一

編集部より
昔のことを、まるで昨日のことのように記憶している佐藤公一さん。それほど片岡作品と出会ったインパクトが強かったということでしょう。大切に持ち続けている雑誌からも伝わってきます。45年もの間、片岡さんの作品を読み続けていることにも驚きです!
今回の一冊 電子版『荒馬に逢いたい』

『ロンサム・カウボーイ』から、『荒馬に逢いたい』をご紹介。

『荒馬に逢いたい』表紙

荒馬の絵と、絵を語る作者の老人。

シャッターを押さなかったことによって定着された1枚の絵。
その絵の起点になった荒野と荒馬を寝袋の中に身を置いた極度の緊張感の中で体験した時間。
荒馬の歴史をカウボーイが語る。

 

『ロンサム・カウボーイ』といえば・・・

佐藤秀明の写真集『LONESOME COWBOY』好評発売中!

『LONESOME COWBOY』表紙

片岡義男『ロンサム・カウボーイ』に触発された写真家・佐藤秀明の写真集『LONESOME COWBOY』。自分自身ロンサム・カウボーイとなり放浪し撮影したアメリカの姿が一冊の本に収められている。

 

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2019年3月15日 12:38

わたしの片岡義男

不定期更新。作家、ライター、編集者……さまざまな立場から片岡作品への思いを語っていただきました。読んだことのある作品でも違った面が見えてくるかもしれません。