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評論・エッセイ

オートミールの朝食

 子供のころ、朝食にオートミールをよく食べさせられた。ぼくが子供のころには、日本のどこをさがしてもオートミールなんてなかったのだが、いまではたいていのスーパーで売っている。
 ドロドロのおかゆのように出来あがった熱いのをスプーンですくい、まだ半分は眠っている自分の唇でフーフーと吹いては食べた。なんにも味つけをしないでおくと、味があるようなないような、不思議な味覚は、大人たちはいやがったけれど、ぼくは好きだった。
 メイプルのシロップをすこしかけると、甘くなると同時にメイプルの素敵な香りがして楽しかった。砂糖…

底本:『アップル・サイダーと彼女』角川文庫 1979年

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