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評論・エッセイ

コニカC35

 コニカC35が発売されたのは、昭和四十三年だという。その頃の僕は、どうやら大人になっていた。しかし、昭和四十三年とだけ言われても、思い出す時代のディテールも実感もほとんどない。西暦になおして一九六八年とすると、自分の年齢との照合を経由してようやく、なるほど、あの頃かという、とおりいっぺんの納得をする。今回の僕の顔写真は、ちょうどその頃に撮影されたものだ。僕がこんなだった頃に、コニカC35は世に出たのだ。

おそらく29歳、ラハイナの家の前で。生意気そうとかチンピラであるとかよりも、この頃の僕にきわめて顕著…

底本:『ラピタ』1998年7月号

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