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 一九六十年代なかばのアメリカで刊行された、ごく一般的な雑誌の広告ページから、ファミリーの写真を僕が写真機で複写したものが、ここにある。どのファミリーも現実のファミリーではなく、さまざまな製品の広告のために、プロのモデルたちを雇って演出した、架空のファミリーだ。現実のファミリーがそのまま登場している写真も、ひとつかふたつはあるかもしれない。

 誇張や美化がいきすぎると、広告を見る読者たちに違和感をあたえてしまう。この当時のアメリカで圧倒的な多数の人たちが理想としていたファミリーのイメージを、どこからも文句のこないかたちで、微妙にほどよく理想化したファミリー像が、ここにある。  アメリカン・ウエイ・オブ・ライフという価値を、そしてそれだけを完全に信奉しつつ、その価値を体現する数多くの具体的な条件を家庭のなかにすべて整え、さあ、ここに私たちの幸せが作り出せるかどうか、アメリカ的な価値に徹底して則したかたちで人生を生きてみましょう、というスタイルのファミリーだ。  アメリカ的な価値の信奉、そしてそれへの順応を、ファミリーの誰もがとことんまで強制されていることから生まれる、きわめて固い枠のようなものを、僕はどの写真のファミリーにも感じる。これほどまでに強固な枠の内部に生きていたなら、その枠をなんとか壊し、枠の外に出て自由になりたい、と人々は思ったはずだ。  そのような自由の、またしてもどこまでもアメリカ的な獲得の模索が家庭の崩壊という出来事なのではないか。崩壊の様相のひとつひとつが激しく悲惨であればあるほど、人々に強制されてきた枠がいかにアメリカ的に強固であったかを、そこに読みとることが出来る。  あらゆる条件の整いきった、快適きわまりない生活場面のなかで、ファミリーが楽しげにくつろいでいる。そのような場面が、現実感を失うことなく、なおかつ理想的でもあるかたちで演出されると、そこになにが表現されたか。それはファミリーを介して強固に突出してやまない、アメリカ的な価値というものだった。

出典:『Free&Easy』2000年10月号


『Free&Easy』 アメリカの色とかたち
2017年12月11日 00:00
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