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評論・エッセイ

「日本はアメリカとともにあります」と首相は言った

 八月三十一日の夜、国連事務総長デクエヤルと、イラクの外相テリーク・アジズとのあいだに、二回めの会談が二時間にわたっておこなわれた。国連安全保障理事会の決議にもとづいた、イラク軍のクエートからの即時撤退と人質の解放とを、デクエヤルはアジズに要求した。「問題の解決はアラブのなかでなされるべきだ」と、アジズは回答した。言葉と言いかたを選んでいくと、こうとしか言いようがなかったのだろう。そして、そうとしか言いようのないイラクを見越して、国連つまりアメリカは、そのような要求をした。
 国連の決議を取りつけたアメリカは、この戦争は…

底本:『日本語の外へ』角川文庫 2003年
『日本語の外へ』筑摩書房 1997年

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