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書評

他人の虹の端に向かって

 虹が空に出る。消えてしまわないうちにその虹の一端までいく。虹が地面のすぐ近くから出ていたなら、その地面を掘る。すると、そこに埋められている秘宝が、自分のものになる。虹の端、ジ・エンド・オブ・ザ・レインボーには、宝が埋まっているのだそうだ。童話に近いような民間伝承だ。
 虹がまだ空にかかっているあいだに、その虹の端までいくのは、至難事だ。とてもながく空にかかっていた虹があったとして、その虹を通常の虹のかたち、つまり中空にかかる七色の半円としてではなく、弧を描いてこちらからむこうにのびている一本のアーチとして、ながめること…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『本を読む人』太田出版 1995年
『アップル・サイダーと彼女』角川文庫 1979年所収

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