『俺のハートがNOと言う』目次
このページは『俺のハートがNOと言う』の目次ページです。
『俺のハートがNOと言う』は1981年8月に角川文庫から刊行されました。収録作品のうち『ブルースのブランケットにくるまって』『俺のハートがNOと言う』は雑誌「野性時代」、『クロスロード』は雑誌「宝島」、『約束』は雑誌「ブルータス」、『水玉模様と月の光』は雑誌「ルパン」にそれぞれ掲載されたものです。
「金曜の午後から、いまこの時間までの私たちって、小説になるかしら」
と、彼女は、きいた。
すこしだけ考えたあと、
「ならない」
と、ぼくはこたえた。
「なぜ?」
好奇心が、微笑する彼女の唇を、非常に美しいものにする。
「ぼくたちが、ながいつきあいではなかったら、小説になるかもしれない。雷鳴と激しい雨の都会で、そのときはじめて知り合った男女が、ふとした成りゆきで週末を都会の外でいっしょにすごし、月曜の朝、都会にもどってきて、二度と会うことはまずないだろうという感じで別れるのなら、小説にできると思う」
ぼくの説明に、彼女は、納得した。
「現実の私たちを、そのとおりに書いたら、どうなるのかしら」
「みじかいエッセイなら、いいかもしれない」
「どんなところに使うの?」
再び、ほんのすこしだけ、ぼくは考えた。
「短篇集の、あとがきがわりとか」
ぼくの返事に、彼女は、楽しそうに笑った。
(「あとがき」より)
Previous Post
