VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

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小説

彼のお気にいり

すべての信号が赤の日と、すべての信号がグリーンの日。

オートバイで走る、ということによってしか
知りえない人の魅力、というものがあるのだろう。
男は前を走る赤いオープン・カーの後ろに付いたまま離れない。
女も、普通なら気味の悪い尾行と思えるこの行為が
なぜかしら心地いい。こうして2人は路上で出会った。
路上の出会い。それは、片岡義男の小説の黄金のパターンだ。
その日、彼女の自動車はそのボディの色のように
ことごとく赤信号で止められた。だがその1年後。
今度はことごとく信号がグリーンの道を走る運…

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