映画館で日本映画を観ていて、
「あ、ボブ・ディラン」
と思わず呟いてしまったことがあった。二〇〇七年に公開された映画『転々』で、画面に現れた主演のオダギリジョーの髪型を見たときのことだ。一九六五年から一九六六年あたりのディランのヘア・スタイルにそっくりだったのだ。強くカールをかけた「もじゃもじゃ」と表現するのがいちばん適当と思われる、あの髪型だ。オダギリジョーはとてもよく似合っていた。あの髪型が似合うためにはいくつもの条件がある。顔が小さくなくてはいけない。顔の大きい人物があの髪型をすると悲惨だ。いくら顔が…