長年にわたって雑誌を作ってきたので、次のような質問をされることがある。
「シノハラさんにとって『これは傑作だった』という一冊はどれですか。教えていただいたら、バック・ナンバーを入手してその号を読み返してみたいのですが」
そんなとき、僕はなるべく誠実に、どの号が自分のベストだったか必死に考えるのだが、まったく思い浮かばない。広い部屋の床の上に、自分が作った雑誌をズラリと並べてもらえれば何か多少は思い出すこともあるのだろうが、いきなりそのような質問をされてもすべては深い靄の中だ。質問者にはおそらく、