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評論

誰もがリアリズムの外で

 二〇〇三年十二月九日、イラクへ自衛隊を派遣することが閣議決定されたあと、首相は記者会見にのぞんだ。戦場であるイラクへ「実質的には軍隊」である自衛隊を送り出す理由を、この会見で首相は説明しようとした。みずからの信念を首相は力強く表明した、と外国の新聞は報じたが、その逆だったと僕は思う。首相は疲れていた。大きな不安を覚えているようにも見えた。方向は定まってはいなかった。憲法の前文の、最後の四分の一ほどを、彼は読み上げた。この部分での彼は激高しているようにも見えた。国益を云々するのであれば、かね〔ママ〕ですませるのがもっとも国益にかなうの…

底本:『影の外に出る──日本、アメリカ、戦後の分岐点』NHKブックス 2004年

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