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評論・エッセイ

小さく三角形に折りたたんだ星条旗

この作品は、『日本語の外へ』「第1部 アメリカ──遠近法のなかへ」に収録されたものです。

 ハンティントン・ビーチから海に向けて突き出ている桟橋の途中にある食堂で、僕は彼とふたりで遅い昼食を食べていた。彼は僕より年上の白人の男性で、広い意味でジャーナリストとして活動していた。カウンターの海側の席にいた僕の前にまっすぐに腕をのばした彼は、桟橋の突端の向こうに広がる海を示した。
「僕たちが食べ終わるまでのあいだに、あそこでさらに何人ものアメリカの兵士たちが、虐殺行為の加担者として無意味に死んでい…

底本:『日本語の外へ』角川文庫 二〇〇三年
『ニュー ルーディーズ・クラブ』(一九九四年九月刊)に『星条旗のはためく下で』として収載。後に改稿・改題
『日本語の外へ』筑摩書房 一九九七年

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