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評論・エッセイ

複眼とはなにか

 複眼、という言葉をよく目にする。複眼の思想とか、複眼のすすめ、といった文脈で使用される。単一のせまい範囲内に限定されたものの考えかたや価値観を越えて、もっと広い視野で自分や世界を多元的にとらえる能力を、一般的には意味している。単眼から双眼を飛び越えて複眼が、多くの人たちによって人々にすすめられている。
 ほんのすこしだけスケールを大きくとって考えると、単眼とは、たとえば自分の世界として日本しか知らないことだ。日本に日本人として生まれ、日本の教育を受けて育ち、自分が日本人であることをなんら疑っていず、日本のなかでのみ通用…

底本:『アール・グレイから始まる日』角川文庫 1991年

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