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評論・エッセイ

8月15日 誕生日

 かつて三津子さんという女性がいた。いまでもどこかで美しく元気にしているはずだ。この三津子さんが二十五歳のときにぼくは彼女と知り合い、彼女が二十八歳のなかばになるまで、ぼくは彼女の数多い友人のひとりだった。
 彼女の二十六歳の誕生日のプレゼントをなににしたらいいだろうかと、ぼくはその年の四月ごろから考えていた。彼女の誕生日は、八月十五日だった。覚えやすくて、とてもよかった。
 プレゼントをなににしたらいいか、八月になってもきまらないので、ぼくは彼女に相談した。そうねえ、なにがいいかしら、と彼女は言っていたが…

底本:『すでに遥か彼方かなた』角川文庫 一九八五年

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