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評論・エッセイ

『彼のオートバイ、彼女の島』

 これが文庫本になったのは一九八〇年のことだ。それ以前に単行本で出ていた時期が、三年はあったのではないか。そしてそれは『野性時代』に連載したものだ。とすると、書いたのは一九七五、六年だったということになる。単行本で出たとき、表紙の片隅に僕は次のような文句を入れた。「夏は単なる季節ではない。それは心の状態だ」。表紙に入れたからには、このひと言こそ主題だったと言っていい。では、心の状態とまで言い得る夏とは、いったいどのようなものですかという質問に、『彼のオートバイ、彼女の島』は答えられるのだろうか。分量は長編と言っていいだけあるこの作品は…

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