簾と提灯のグラフィックス
簾と提灯のグラフィックス
この写真にある光景は、僕にとってはグラフィックス以外のなにものでもない、という種類の光景の典型だ。自分でこれだけの光景を三次元で作り出すのはたいへんだが、写真に撮るのは難しくもなんともない、発見さえすればそれでいい。吊ってあるふたつの簾のうち、ひとつは二本の紐のうちの一本が切れている。そのことがぜんたいにとって破綻となるどころか、グラフィックな出来ばえを増幅している様子を喜びたい。光の加減がちょうどいい。ぜんたいをまとめ上げているのは、なんと言っても配管だ。 次の光景も、僕にとって…
底本:『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』ちくま文庫 二〇〇三年
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