VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

太陽の直射光と簾の相性

太陽の直射光と簾の相性



 東京の光景に写真機を向けて、数万回はシャッターを切ったことの成果のひとつとして、簾はフォトジェニックであるという発見を僕は持っている。ここにある光景のなかの簾は、どちらも天然の素材を使ったもののようだ。天然の素材であるがゆえにおたがいにどんなによく似てはいても、まったく同一の作りの素材は、絶対にふたつとない。一本ずつどれもみな異なる。そしてそれらの細い軸が何本も、おなじ平面を作るよう、編まれた紐で緊密につないである。この平面に直射光が当たると、光はほどよく…

底本:『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』ちくま文庫 二〇〇三年

このエントリーをはてなブックマークに追加