樹
孤独な男は、二度失う。二本の樹を失い、二回の銃弾がこだまする。
長い歳月が、何もかも変えてしまうことがある。
そして、最もかけがえのないものが、あまりの純粋さゆえか、
やはり長い長いあいだ、記憶の底に沈んだままでいることがある。
2つの長い時間が交錯するその時、悲劇に振れてしまうことがある。
かつて子供の頃に1年だけ住んだ町のあまりの変貌に呆然としつつ
1枚の絵によって忽然とよみがえった自分の宝を
男は実に34年ぶりに探し始める。
その願いが叶うはずのないことが理解された時、
男の居場所はもはや、静かな…