VOYAGER

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小説

なんという甘いこと

まだ始まってもいない物語の空想段階はほどよく甘い

25歳と28歳と24歳。
この短編には三つの時間が流れている。
24歳、25歳、28歳と自然の時間の流れに沿うのではなくまず25歳から始まるが描かれる場面は28歳のそれで、そこからパッと現実に引き戻されるが、その着地点はさっきまで彼女がいた25歳ではなくもう1年昔の24歳。
そのようなささやかな、しかしめまいのするような時間のアクロバットによって、彼女はいま、ある「甘さ」の中にいる。
それは弱さであると同時に貴重な甘美さでもあるだろう。

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