and I Love Her
春から春へ。事件無き彼女の肖像。
1人の女性がいる。
この小説は、彼女の輪郭と所作だけを丁寧に追ったものだ。
彼女がどんな部屋に住み、どうやってコーヒーを飲み、クーペを運転し、どのように眠り、バルコニーにいる時の様子や風を受けた時の表情などが、積み重ねられていく。
彼女には雨と月の光がよく似合う。
小説とは、ドラマや事件、葛藤とその克服、といった起伏が必要だ、
という思い込みを、この作品はワイパーできれいに払拭する。
それも、長篇と読んで差し支えない長さを擁して。
1点、注意を。「あと…
前の作品へ
次の作品へ