「いちばんお好きな料理はなにですか」と、たまに訊かれる。サンドイッチです、と僕は答える。まともには答えてもらえなかった、というニュアンスの、ごく軽く憤慨したような、怪訝そうな表情が返ってくることが多い。
駅の売店で売っている、透明な皮膜によって三角形に包装された、ミックス・サンドというようなものしか思い浮かばないなら、憤慨も怪訝も当然のことだろう。
手軽でいいですよね、と合わせてくれる人もいる。先日、代官山の蔦屋書店で友人の小西康陽さんとトーク・ショーをおこなったとき、サンドイッチの本を棚に探したら、ひ…
『朝日新聞』二〇一三年三月二日