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評論・エッセイ

先見日記 彼女が残した3冊の手帳

 金子みすゞの3冊の手帳を僕は見た。金子みすゞ展が開催された会場の、入り口から出口へいたる「順路」の途中、透明なプラスティックの展示ケースのなかに、3冊の手帳はならべてあった。この3冊の手帳のなかに、金子みすゞは512篇の詩を書いた。それが彼女の書いた詩のすべてだということだ。遺稿という言葉が、展示ケースのなかの説明書きには使ってあった。生前に彼女が書いた詩のすべてがこの3冊のなかにあるなら、その3冊は遺稿と呼んでもいいだろう。
 横が95ミリに縦が140ミリというような、手帳としてごく標準的なサイズのものだった。3冊とも…

『先見日記』二〇〇五年一月十八日