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評論・エッセイ

片岡義男のぼくのお気に入り道具たち キャリアウーマンの枕元がよく似合うトラヴェル・クロック BRAUN・クオーツ AB310ts

 東京駅の新幹線の発着プラットホームへあがっていくと、ぼくの乗るべきひかり号はすでにホームに入って来ていた。いちばん手前のグリーン車まで歩いていき、ぼくは車輛のなかに入った。そして、ぼくの座席があるはずの12号車まで、歩いていった。
 12号車に入り、車輛のちょうどまんなかあたりにある自分の座席まで歩いていったぼくは、おなじ車輛の向うのドアから入ってきておなじくなかばあたりまで歩いて来た、たいへん感じのいい女性を、ふと見た。ほぼ同時に、彼女もぼくを見た。
 彼女は笑顔になり、ぼくも笑顔になった。きれいに整っ…

『BE-PAL』一九八四年八月号

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