ロンサム・ジョッキー 12 西テキサスの小さな町で 3
アメリカ! 放浪の旅
★新しい風を求めて
そうか。やはり、そうだったのか。ランチなんて、この30年、一度も食ったことはなかったのか。ぼくは、カウンターの男をあらためてながめなおした。これからさきの30年も、ランチなんか一度だって必要ではないような、たくましい体をしている。骨の太い体格のいたるところに、分厚い脂身を固くプレスしてはりつけたような体だ。白い肌が陽に焼けて赤く、金髪に近い栗色の体毛がまるでブラシのようだ。顔には、ウイスキーのせいだろう、うっすらと脂がにじんでいて、いかにも不敵そうな頰…
『ミスター・バイク』一九七七年四月号