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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

片岡義男のアメリカノロジー スラック・キー・ギターは、ハワイの風や陽ざし、そして波の音までも感じさせてくれる。

 レナード・クワンのスラック・キー・ギターをはじめて聴いたときの全身に鳥肌が立つようなスリルを、いまでもぼくは忘れることができない。もう20年ちかくも前のことだ。
 カネオヘの〈ハニーズ〉という店だった。仲間のミュージシャンたちの演奏を楽しむためにお客として来ていたレナードがステージにひっぱりあげられた。眼鏡をかけたおとなしそうな中国系の人で、うつむきかげんにはにかんでfホールのギターをうけとり、椅子に腰をおろし、ひとりでギターを弾いてみせた。文字どおり、チキン・スキン・ミュージックだった。情感の深さ、感受性の途方もない柔…

『POPEYE』一九七七年十一月十日号

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