俺は商社、俺は証券
僕が大学の四年生だった頃、夏休みまでに卒業後の就職先が決定するか、あるいは内定を取りつける学生が、たくさんいた。四年めの初夏から、同級生たちの話題は、就職についてだけとなった。
ある日、突然、そうなったような記憶がある。それまではいつも遊んでいた連中が、ある日を境にして、就職にたいしてたいへんな熱意と執着とを、見せるようになった。これはいったいなになのだろうかと、初夏の陽ざしのなかを歩きながら不思議な気持ちとなったのを、いまも僕は記憶している。
四年かけて大学を卒業するのが仮に三月三十一日だとすると、次の…
底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 二〇〇〇年