波止場通りを左に曲がる
デビューしてまだ間もない頃の美空ひばりを、何点もの写真で見ることができる。多くの写真に彼女は撮られ、それはさまざまな刊行物のなかに複製されている。そのような写真を数多く見ていくと、やがてはっきりわかってくることがひとつある。歌を歌うこの少女は、いっさいものおじしなかったのではないか、ということだ。そう感じさせる強い力のようなものを、幼い少女の彼女はすでに持っている。彼女の写真を見ながら、僕は思う。
子供の頃、彼女の体のバランスは、よくまとまっていた。顔立ちは可愛い。表情ははっきりしている。そのはっきりした様子のなかに…
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