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評論・エッセイ

幼い頃から現在までの僕に対して、本というものが果たした素晴らしい役割

 ずっと以前から現在にいたるまで、なくしたり捨てたりせずに僕が持ち続けてきたものを身のまわりに捜したら、本というものを何冊か見つけた。本のほかは、なにも残っていないようだ。そのなかでもっとも古いのは、僕が七歳くらいの頃に使った英語、つまり国語の教科書のうちの一冊だ。七歳から現在まで、失うことなく持っていたという事実は、時間や状況の変化のなかで思いをめぐらせると、奇蹟だと言っていい。幼い頃の絵本からはじまって高校生の頃に読んだペーパーバックまで、十数冊の本が手もとに残っていた。
 本は残りやすいのだろう。大人になるまでの僕…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『本を読む人』太田出版 1995年

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