『ぼくは片岡さんが大好き』二台欲しいのです
1冊の本が出来上がるまでには多くの人が関わります。とりわけ編集者は、本の形すら見えていない段階から常に作家の近くに寄り添い、共にゴールを目指す同志とも言える存在でしょう。そして、その作家についてもっともよく知っているのが編集者、とも言えるのではないでしょうか。この連載では、片岡義男の4作品を世に出し、ここ数年を片岡との二人三脚で歩んできた編集者・篠原恒木さんに実際に見た・聞いた「片岡義男についてのさまざまなエピソード」を語っていただきます。篠原さんの手によるイラストと共にお楽しみください。
◆ 著者紹介
篠原恒木(しのはらつねき)
女性月刊誌『JJ』(光文社)元編集長、出版物の宣伝統括などを担う。片岡義男の編集担当としてこれまで4作品を世に出す。特に『珈琲が呼ぶ』(2018)は刊行当時、珈琲ブームの火種ともなった。この他、片岡自身が物書きから作家としてデビューするまでを綴った『コーヒーにドーナツ盤、黒いニットのタイ。』(2016)、片岡義男が愛する3組のミュージシャン、ザ・ビートルズ、ボブ・ディラン、エルヴィス・プレスリーの映像に関するエッセイ集『彼らを書く』(2000)と話題作を送り出す。最新刊は『珈琲が呼ぶ』の続編とも言える『僕は珈琲』(2023)。片岡義男.comでは『彼らを書く』のスピンオフとも言える『僕も彼らを書く』、そして『ロックを再生する』を連載。
◆ 著者よりひとこと
今回から、片岡義男さんについて僕の知っていることを書かせていただきます。よく「素顔」という言葉がイディオムのように使われますが、この文章は「片岡義男さんの素顔」ではありません。「素顔」というフレーズはなんだかとても胡散臭いですよね。僕も「僕自身の素顔」なんて自分でもよく分かっていませんから。
ですから、この短い文章は「片岡義男さんに関するエピソードのほんの一部分」です。タイトルは片岡さんの名著からいただきました。僕の気持ちを端的に表すなら、このタイトルしか有り得ませんので。
片岡さんの作品を愛する皆さまに楽しんでいただければ幸いです。
◆ 最新刊(2024/10/9公開)
第三十九回『二台欲しいのです』
片岡義男が少年時代に広島原爆の「光」を見た、という話は多くの方がご存知でしょう。ある日、片岡から篠原さんに「広電(広島電鉄)の模型を2台欲しい」という連絡が入ります。広島に原爆が投下された時、市内を走っていた広電の車両も被爆しましたが、そのうち、650形651号・652号の2両はその後も走り続け、“ヒロシマ復興のシンボル”とも言われました。その後改修され今も現役として走っていますが、片岡が欲しいのはこの車両の模型でした。しかしこの模型は広島電鉄だけでの限定販売。現地に行かないと購入できません。それにしてもなぜ2台なのか……。怪訝に思いながらも篠原さんは購入へと動き出します。→ 作品を読む
◆ 過去の連載
- 第三十八回『百円コーヒー、初体験』
- 第三十七回『現地集合、現地解散』
- 第三十六回『カレーライスの日々(後編)』
- 第三十五回『カレーライスの日々(前編)』
- 第三十四回『その話は』
- 第三十三回『始まりは鉄火巻き』
- 第三十二回『緑色のフィクション』
- 第三十一回『僕の日本語は六十五点』
- 第三十回『怪猫片岡騒動』
- 第二十九回『片岡義男的な封筒』
- 第二十八回『指令はリーガル・パッドで』
- 第二十七回『まさにサンドイッチマン』
- 第二十六回『たまごサンドの権威』
- 第二十五回『あってはならない』
- 第二十四回『人生の写真』
- 第二十三回『ボールペンを削る』
- 第二十二回『嘘つきな片岡さん』
- 第二十一回『お苦手な食材はございますか』
- 第二十回『唯一のコールド・ケース』
- 第十九回『タリーズにて』
- 第十八回『片岡さんが拍手をした』
- 第十七回『簡単なステーキ』
- 第十六回『物語は前進させないと』
- 第十五回『ノー・コ麺ト』
- 第十四回『低地の味がする』
- 第十三回『きみの手をとりたい』
- 第十二回『カタオカさーん!』
- 第十一回『スローなブギとは』
- 第十回『よく食べるわねぇ』
- 第九回『ポテト・チップスならここだよ』
- 第八回『フレンチ・フライの永久運動』
- 第七回『一枚のレコードを探して(後編)』
- 第六回『一枚のレコードを探して(前編)』
- 第五回『ロンサムとは』
- 第四回『ボブ・ディランの聴き方』
- 第三回『表へ出ろ』
- 第二回『いつもお世話になっております』
- 第一回『明けましたらおめでたいのか』
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