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評論・エッセイ

私の恋も終わるのよ

 鞍馬天狗のように僕を助けてくれる八郎お兄ちゃんこと佐藤八郎さんから、ある日、ヴィデオ・テープが一本届いた。昭和三十年、一九五五年、日活が公開した映画『銀座二十四帖』を録画したものだった。一九五五年当時の、いまはもうどこにもない東京、とくに銀座とその周辺に関する共通した興味ゆえに、彼はそれを送ってくれた。この映画について、僕はその存在すら知らなかった。テープを受け取ってすぐに、僕はそれを見た。
 ストーリーを簡単に説明するのは、思いのほか難しい。あまりにも失敗しているから、と言うよりも、そもそもシナリオに関してほとんどなん…

底本:『音楽を聴く』(第三部「戦後の日本人はいろんなものを捨てた 歌謡曲とともに、純情も捨てた」)東京書籍 一九九八年

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