僕の最初の横浜はYHMだった
僕の父親はアメリカの日系二世で、僕が育った戦後は駐留米軍の一員として仕事をしていた。その父親といっしょに、まだ子供だった僕は、戦後の日本のいろんなところへ旅行した。父親にとっては仕事で移動していただけだが、無理やりついていく僕はなんの責任もない呑気な旅行気分だった。駐留米軍の専用列車というものが鉄道を別ダイヤで走っていて、それに乗っての旅だ。
当時は山口県の岩国にいた僕が最初に父親とともに横浜へいったとき、横浜はYHMだった。父親はいつも手帳とペンを持ち歩き、いろんなことを書きとめておく人だった。横浜への旅の予定も記入…
底本:『ノートブックに誘惑された』角川文庫 一九九二年
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