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評論・エッセイ

『日本語で生きるとは』 まえがき

「よろしくお願いします」という日本語を英語で言うには、なんと言えばいいのですかと、十か月ほどのあいだに五人の人たちから訊かれたことが、僕がこの本を書くためのきっかけとなった。五人ともいつも日本にいて、日本語で仕事をしている、二十代から五十代までの日本人だ。
 なぜそんなことを知りたいのかと、僕はどの人にも質問した。どんな言いかたをすればいいのか知りたくて、と答えたひとりを別にすると、ほかの四人の答えはよく似ていた。たまに仕事で外国の人を相手に英語を使うとき、たとえば話のしめくくりのとき、「よろしくお願いします」と言う必要が…

底本:『日本語で生きるとは』筑摩書房 一九九九年

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