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評論・エッセイ

追憶の春、現在の春

 三月、四月、そして五月の三か月が、日本の春だという。この春をめぐって、もう何日も前から、僕はさまざまに考えている。考えるとは言っても、春の食べ物にはなにがあるのだろうか、というきわめて基本的なことだ。春の食べ物。春になると人が食べることの出来るもの。春が旬のもの。僕ひとりが素手で考えていても、らち埒は明かないことがわかった。だから僕は助けを求めた。
 国際的な芸術家の奥さんに、春の食べ物にはなにがありますか、と訊ねたところ、頭に春という字をつければいいのよ、という大胆な答えが返ってきた。春のシロナガス鯨かよ、と僕は言い、…

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