お隣のかたからです
東京で知り合った女性たちと、倉敷や広島で偶然出会う物語。出会うこと自体がストーリーを動かすのではなく、物語そのものであるというスタイルの見事さ!
妹に頼まれて、東京から大分の実家までベンツを父親に渡すために高速に乗った菅野達也は、なんとなく降りた倉敷の町で、偶然、かつて東京の同じバーでバイトをしていたレイナと出会います。そこから始まる偶然が重なる物語は、広島のバーで、かつて共演した女優の三崎布美子にも出会うという形で連鎖します。まるで、オデュッセイアのような、行って戻ってくる物語が、片岡義男の手にかかると、このような街の物語に仕上がる面白さが堪能できます。そしてレイナの家族がやっている旅回りの一座の公演を見たくなる小説でもあります。
底本:『ミッキーは谷中で六時三十分』講談社 2014年5月
初出:「群像」2014年3月号
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