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評論・エッセイ

片岡義男のぼくのお気に入り道具たち ぼくの部屋にある彼女のための4番目のデミタス・カップ

 そのコーヒー・ショップのテーブルは、丸くて小さかった。コーヒーだけを出す店だから、テーブルは小さくてもいいのだ。
 ぼくと彼女は、奥まったテーブルに、さしむかいにすわった。丸いテーブルの直径が小さいから、さしむかいであっても、親密に顔を寄せあっているような雰囲気となることが出来た。
 ぼくは水出しコーヒー、そして彼女はエスプレッソを、注文した。どちらもデミタスに入って、すぐにテーブルに届いた。
 ふたりのデミタスを、彼女は見た。そして、首を振った。どちらのデミタスも、彼女は見たことがないとい…

『BE-PAL』一九八五年九月号

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