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写真は語る by 佐藤秀明(3)

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帰国後すぐの2017年11月13日、セレクトされた200枚の写真が次々とスクリーンに映し出された。すぐさまスタッフが取り囲み、その語りに聞き入ってしまった。この状況をそのままみなさまへお届けしたいと思います。全5回にわたって公開していく予定です。まさに至福のひととき請け合い、どうぞお楽しみ下さい。『ロンサム・カウボーイふたたび』とは?

全5回| 12345



今回辿るルートはオースチンマンハッタントノパー

オースチンの朝、カフェで昔の記憶を確認する

■オースチンの朝

佐藤 朝です。
 赤い矢印に“CAFE”って書いてある看板があるじゃない? これはインターナショナルカフェっていって、この道路を走る人間には有名らしいんだ。このちょうど対面に僕の泊まってるモーテルがあってさ、朝飯をここに食べに来たの。そしたらここがすごいんだ。

■年季の入ったバー

佐藤 ほら、バーになってる。向こうの方にちゃんとダイニングがあるんだけど、そこで食べても面白くないから、こっちで食べさせてくれって言って、ここでサンドイッチ食べてた。そしたら朝から飲みに来てる奴がいるんだ。

■みんなお客さん?

佐藤 この女の人見てよ、もうお尻の割れ目が見えちゃってるんだよ。

北條 この人も飲んでるんですか?

佐藤 違う、ウェイトレス。働いてる人だよ(笑)。

■鏡とお酒

佐藤 これは正面から撮ったやつですね。これ聞くの忘れたんだよな、ちゃんと呼び名があると思うんだ。
 昔これと似たような場所を撮ったことがあって、その写真を伸ばして持ってたんだよ。ここのバーテンのおばあちゃんに、これオースチンのバーじゃないかって聞いたんだ。そしたら一目見て「違う、これはここにはない」って言って、スマホでサーッて検索して、これだろって見せてくれた。これはリオの方にあるバーだって言われて記憶をずっと辿ってみたら、そうだ、リオでもバー撮ったなって。

八巻 そんなすぐわかるものなんですね。

佐藤 わかるわかる。そのおばあちゃんだって相当な歳なんだけど、みんなスマホの扱いが俺より速いんだ(笑)。

■誰もいないバー

佐藤 誰もいない時に撮らせてもらった。天井に貼ってあるのは全部お札。要するにトレビの泉みたいなもんだよ。お金を投げて何か願い事をするみたいに、みんな飲みに来ては天井に貼っていくんだ。

■ゲームコーナー

佐藤 奥はこんなふうになってます。ここのスロットはテーブルに組み込まれてなかった。
 とにかくネバダってね、どこもスロットだらけなの。レンタカー借りに行っても壁際にズラーッと並んでるしさ。ちょっと暇だな、小銭余ったなと思ったらみんなやるんだ。

■天井にあるもの

佐藤 農耕用の牛につける器具だね。天井に吊るしてあったんだ。

■バーのお父さん

佐藤 ここのバーのお父さんがよく働くんだ。もうそろそろ冬だから、木を切っては積み重ねてた。この薪も一冬で使っちゃうって言ってた。とにかくこの部屋を暖かくしておかなくちゃいけないから相当使うんだね。
 写真撮ってうろうろ動き回ってたら、お前いくつだって言うからさ、74だって言ったら、俺は78だぞって言うからさ。だからなんだって(笑)。

八巻 勝ったとか思っちゃったんだろうね(笑)。

■倉庫のおとっつぁん

佐藤 倉庫で作業していたおとっつぁんなんだけど、頭がハゲてんだよ。で、俺がカメラ向けてたら、ぱっと帽子を取って、クシを取り出して、頭をとかしつけてた。なかなかいいおとっつぁんで、お願いして写真を撮らせてもらった。

■オースチンを散策

佐藤 オースチンはぶらぶらカメラを持って歩くと楽しい所だったね。人がいなくなった家だとか、まだ人はいるんだけど本当はいないんじゃないかっていうくらい荒れ果てた家とか、いろいろなんです。ここに写ってる家はもう人のいない家だった。

■30年前のオースチン

佐藤 これは30年前の写真だけど、かつてはこういう車が走ってたんだよ。

■トラックと黄色い花

佐藤 これは現在ですね。歩いてたら見つけた。

八巻 可愛い。付けてある黄色い花は?

佐藤 造花です。この車は走ってなくて、ずっと置いてあるっぽいですね。

オースチンを出発、夕方の光の美しさ

■ふたたび走り出す

佐藤 オースチンは標高が高いから、そこからずーっと下っていく。

■どこまでも続く道

佐藤 僕がここを調べている時に見たショッキングな写真があって。ここを馬に乗ったカウボーイが横切るんだよ。すごくいい写真でさ。ゲッて思ったんだけど。

■50号線、撮り納め

佐藤 50号線をいろいろと撮ったんですよ。たぶんオースチンの付近で50号線の撮り納めになるからさ。

■西日に染まる道

佐藤 これは夕方の写真ね。ちょうど光がよくて。

■山と道路と電線

佐藤 このずーっと走ってくる線と、電線の線が、もうちょっと暗くするとよく見えるんですけど、とてもきれいで。太陽の光がスーッと見える。

■もう日が暮れる

佐藤 これももうちょっと暗いと、この光と道がスーッと見えて、ライトが2つぽつんと見えるでしょ。この道が見えるはずなんだよ。

■ヘッドライト

佐藤 もう暗くなってきちゃった。どんどん沈んでいっちゃった。

■さよなら50号線

佐藤:それで、次の朝。50号線をしばらく行って、そっから右に入ります。でもその前に撮り納めだし、ちょうどいい光の具合だから撮ったんです。
 さよなら50号線。

唐突に郵便ポストが。どのくらいの頻度で郵便が来るのだろう

■376号線に入る

佐藤 今度は376号線、SOUTH。南へ向かうわけですね。これがまた本当に退屈な道で(笑)。このころになると風景にも慣れてきてるからさ、「またか……」って。

■やっぱり何もない

佐藤 でも50号線と違って交通量が多いんですよ。しょっちゅうすれ違うしさ。だけど人が住んでる小さな集落から次の集落まで、大体2時間半から3時間はかかりますね。

北條 その間、立ち寄る場所とか何もないんですか?

佐藤 ない。だから距離からすると、東京の中央自動車道で行って調布の辺りから諏訪まで走ってやっと辿り着く。

■道ばたの郵便受け

佐藤 近くに集落があって郵便受けが置いてある。この数だけしか家がないんですよ。この砂漠の中に、ぽつぽつぽつぽつって。

北條 ここに郵便を届ける人がいるんですね。

佐藤 そう、わざわざ来るんだよね。まとめて来るんだよ、きっと。
 こういう所は木で覆われてるわけじゃないから。例えば最初のルンドって街は木が生えてたでしょ? だから車が走ってても見えないじゃない。ところがここは砂漠の中だから、僕の乗ってる見慣れないよそ者の車が近づいてくると、向こうも何されるかわからないから警戒する。だから迂闊に入って行けないんだ。知り合いでもいればいいけどね。

■道ばたの郵便受け2

佐藤 きっと住んでる人は2週間に1度とか取りに来るんだろうね。

■セージはある

佐藤 セージくらいしか撮るものがない。何もない。
 ちょうどこの道の右側がエリア51。だんだんアメリカ空軍のジェット機が時々飛ぶようになった。

■看板と弾痕

佐藤 途中でマンハッタンっていう、鉱山で昔栄えた集落に立ち寄ったの。数軒しか家がなかった。この看板は誰かがショットガンで撃ったんだね。

■マンハッタンはマンハッタンでも

佐藤 こういう街。寂れて何もなくて。腹が減ってたんでお店探してたら、1店だけコーヒーショップが開いてた。ただね、本当にひげ面の汚い埃だらけのオヤジたちがズラーッと並んで飯食ってて、一斉に俺の方をグワッと見るんだ! 思わず、間違えましたーって出てきちゃったからね(笑)。

■錆びた車、ログハウスの教会

佐藤 これもマンハッタン。ここにログハウスの教会があった。ログで作った教会。
 通りを車で走っててもさ、いるんだよ。『ローハイド』って映画にウィッシュボーンって爺さんがいたでしょ。あんな感じのガラの悪いのがいっぱいいて、こっちを迷惑そうに見てるんだよ。すみません、行きます行きますって足早に去りました(笑)。

『ロンサム・カウボーイ』にも出てくる街、トノパー

■トノパーに到着

佐藤 ここが第二の僕の目標の街。片岡さんの『ロンサム・カウボーイ』に出てくるトノパーっていう所で、ここからいろんな所へ道が通じてる。
 この正面にあるホテルはすごく老舗で、今はほとんどゴーストタウンみたいな街なんだけど、昔の格式を保ちながら営業してる。宿代もすごく高いの。僕は泊まらないで2キロぐらい離れたモーテルに泊まったんだけど、今考えたら泊まった方がよかったかなと。

八巻 ここも懐かしい街なんですか?

佐藤 ここは初めてだけど、いろんな所で名前が出てくるんで一度行ってみたいとは思ってたんだ。

■夕方のトノパー

佐藤 これはホテルの夕焼け。こんなビルが1個と、手前に小さいビルがもう1個あるだけの集落で、あとは昔、銀を掘ってた所の廃墟がたくさんある。この街を取り囲んでいる。

北條 宿泊する人とかいるのかな。

佐藤 いるいる。一番右の建物なんかは立派なモーテルで、真ん中の“MIZPAH HOTEL”より高いんだよ。モーテルの方が人がたくさんいる。
 この道はネバダでいうと、ラスベガスからリノへ通じる95号線といって、日本でいえば東海道。

北條 じゃあもう、東西の主要幹線道路ですね。

■きれいなバー

佐藤 ほら、バーなんかもキチッとしててきれい。僕が見てたら、車から老夫婦が降りて、そしたらサッとボーイが出てきて、あのほら、シャツだとかああいうのを吊るす、なんていうの、ああいうの? ガラガラーッて移動できるやつ。そこへサッと持っていくって、そういうことをやっている。

■窓に反射するネオン

佐藤 これなんか窓に、そのホテルのネオンが映ってる。

■ホテルの中の花

佐藤 これはホテルの中をうろうろしてるところ。造花だけど、飾り物があったり。

■映画のポスター

佐藤 このホテルの通りの前に、映画俳優のポスターとか写真を売る店があったんですよ。そのショーウィンドウを見てたら、向かいのホテルが映ってたから撮った。

■ズラリと並ぶ写真

佐藤 これは誰だかわかる? だーれだ。……正解は、ジェリー・ルイスです。

■ズラリと並ぶ写真2

佐藤 なんかね、昔の歴史を感じさせるフォトだった。

■ホテルの看板

佐藤 “VACANCY”、いつでもいらっしゃい、って。ここも空いてるんだね、誰も泊まらないけど。

■トノパーの酒場

佐藤 そのホテルのちょうど真ん前に酒場がありました。ちょっとのぞいたんだけど、オースチンとかのほかの酒場とは全然雰囲気が違うんだ。ここはちょっと都会的な酒場だよね。スロットがいっぱいあって、キャラキャラしてて。あんまり入る気がしなかったな。
 こうして徐々に日が暮れていきます。


2017年12月20日 12:00

片岡義男とも深い交流のある写真家・佐藤秀明が、30年ぶりにアメリカの地に訪れる。自身が“ロンサム・カウボーイ”となり、どこまでも続く乾いた土地を走りながら、かつての風景との違いを写真に収めていく。