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写真は語る by 佐藤秀明(2)

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帰国後すぐの2017年11月13日、セレクトされた200枚の写真が次々とスクリーンに映し出された。すぐさまスタッフが取り囲み、その語りに聞き入ってしまった。この状況をそのままみなさまへお届けしたいと思います。全5回にわたって公開していく予定です。まさに至福のひととき請け合い、どうぞお楽しみ下さい。『ロンサム・カウボーイふたたび』とは?

全5回| 12345



今回辿るルートはイーリーユーレカオースチン

文中に編集部コメントが入っています!

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まさにLonesomeなイーリーの朝の風景

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■静かな朝

佐藤 イーリーの街です。到着した晩はもう疲れ果てて泊まって。次の朝早く街をブラブラして撮ったんですけどね。こんなトラックは普通に走っていますよ。
 ここで人を見たのは、さっきの蒸気機関車のメンテナンスをやっていた人たちと、モーテルのおやじと、それから朝飯を食ったちっちゃいコーヒーショップのウェイトレスぐらい。歩いている人なんて誰もいない。

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■静かな朝2

佐藤 なんていうか、ロンサム・カウボーイの世界だよ、本当に。

北條 本当にそうですね、この寂しい感じが。ちなみに朝ご飯はどんなメニューなんですか。

佐藤 やっぱりね、どうしてもベーコンエッグとかハムエッグにしちゃうんだよ。ほかのを頼むとものすごい量が出てくるから。

八巻 ほかのメニューってどんなものがあるんですか。

佐藤 オムレツだとか、朝からステーキもある。しかもお皿の直径が30センチ以上ありますから、全部食べてたらほんとおなか壊しちゃう。

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■朝陽が暖かくて

佐藤 陽が当たってきてね、思わずゴロンと横になって昼寝……というか朝寝したいなって感じ。これはまだ朝です。なかなかね、モーテルに倒れ込んでも興奮してて眠れないんですよ。そうやっているうちに疲れが溜まってくるからね。

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■ふたたび走りだす

佐藤 次はユーレカという街へ向かいました。ユーレカっていうのは結構歴史があるんです。本当かどうかはわからないけども、アメリカで一番古いオペラハウスがあるっていうことを聞いていたんで、とにかくそれを目標に走りました。
 だんだんと太陽が上がってくると気温も上がって、標高が高いのにジリ〜ッと暑くてね。あっちこっちに逃げ水が出てた。

八巻 この写真は昼過ぎくらい?

佐藤 これはまだ午前中です。
 街を出ればこういう道しかない。ずっと次の街まで走るんです。これは50号線という、「アメリカのいちばん寂しい道」と言われている場所。「寂しい」っていうのは車が通らないから、ということではなくて、人里から最も離れている所を走っている道っていう意味。それでここを雑誌の『LIFE』が特集したのよ、“Loneliest Highway in America”といってね。そこを走りにくるファンもいるわけね。

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■セージの海

佐藤 横を見るとこうですよ。これ全部セージですよ。

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■一本道

佐藤 ただひたすら次の街へ向かう。何にもないですよ。

こんなに人がいない場所でトラックがブレーキをかける時

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■西へ続く道

佐藤 これ、写真を道のすぐ脇で撮っているでしょう? じつは僕が立っているすぐ後ろが四つ角のスペースになっているわけ。車から降りるときはそこに車を入れておかないといけない。僕も車を運転してて、もし道路のすぐ脇に人が立ってたりしたら、それはおっかないよ。あいつ何してるんだろう、と車を思わず停めてしまうかもしれない。
 だから僕が写真を撮ろうと思って立っていると、トラックが向こうの方からブレーキかけるのがわかるんだよ。それでわざわざ道路の反対側にゆっくり走っていくんだよ。向こう側を通り過ぎてから一気に加速する。それはそうだと思う。

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■巨大なトラック

佐藤 これがそう。デカイよ、トラック。日本のトラックの倍近くはありますよ。長くてデッカクてさ。たまたま通り過ぎていったんだよ。

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■標識と車

八巻 飛んでるみたい(笑)。路肩は少し下がってるんですか?

佐藤 下がってる。ここは道路の角なんです。手前から来た人はこの“STOP”を見て停まるわけ。交通マナーのよさはびっくりした。例えば四つ角で僕が立っているじゃない。そうすると四つの方向から来た車は全部停まる。それで僕がどういう意思でもってここに立っているか見極めてから発進するよ。あれはびっくりしたね。

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■ユーレカに到着

佐藤 ここがユーレカ。50号線というのは、夏は過酷でどうしようもない道でしょう。だからここを走るためのサバイバルブックっていうのがあるんだよ。案内所もあって正しい走り方とか教示してもらったり、ガイドブックをもらったりして、そうしてから行くわけ。そうしないとネバダの道路っていうのは、夏は殺人的に暑いし、命取りになる。持っていくべきものはどんなものがあるか、全部教えてもらう。

北條 “Coors”とか看板出てますね。

佐藤 そうです。僕はここでお昼ご飯食べてます。

八巻 おいしかったですか?

佐藤 おいしかないなあ(笑)。とにかくね、生きていくために口に入れるという感じ。パンはパサパサだしさあ。でも人は結構入ってたね。

ポリスカーに要注意

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■ユーレカの街並み

佐藤 こういう街なかって必ずどっかにおまわりさんがいてね。ポリスカーが隠れてるんだよ。街に差し掛かると、徐々に「スピードを落としなさい」っていう看板が出てきて、大体こういう道で70マイルくらい。それが近づいてくると50マイルになり、次は45マイルになり、35マイルになり、街の中は25マイルです。そこで25マイル以上出していると、すぐサイレンを鳴らして出てくる。違反すると必ずやられる。もう何人も見たよ、捕まってる奴を。
 向こうの罰金はね、スピード違反はそれほど大した違反じゃないんだよ。なんていうのかな、“道徳的な違反”ってあるでしょう。例えば身体障害者が停めるスペースに停めちゃったりとか。これは高いんだよ。ガーンと取られる。
 でも基本的に車は街じゅうどこに停めてもいいの、こういう赤い線のある所以外は。一日中停めていてもいい。そういう意味では楽だったよ。

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■オペラハウスのある通り

佐藤 この一番右奥の建物が、アメリカで一番古いと言われているオペラハウスですね、確か。

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■雑貨屋

佐藤 こういう街は、ブラブラ撮影しながら歩くのがすごく楽しくてさ。これは雑貨屋です。

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■昼間のバー

佐藤 昼飯食べた所。夜はバーだけど、昼間から飲んでる人たちもいる。それでね、ちょうどワールドシリーズの予選がすごかったから、みんなテレビに夢中なんだよ。ドジャースが勝ち進んでるからどこ行っても野球見てる。やっぱりこの辺の人はみんなドジャース好きなんだよね。

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■オペラハウスの内観

佐藤 オペラハウスです。1階は椅子を全部取っ払ってイベントスペースにしてるみたい。今でも音楽会やったり、ミュージックコンサートしたりいろいろやってる。それで上は観客席。昔の椅子がそのまま保存してある。

かつてゴールドラッシュで湧いた街は過疎化が進んでいた

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■オースチンを目指して

佐藤 次はオースチン。第一の僕の目標である懐かしの街です。標高は上がってるんだけど、なぜか気温もだんだん上がってきた。

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■逃げ水

佐藤 これが逃げ水ですよ。次の写真がもっとすごい。

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■逃げ水2

佐藤 気温が上がったからこんなふうになっちゃって。水が道の上をほとんど覆ってるように見えるもんね。真夏なんかもっとすごいんだろうね。

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■オースチン

佐藤 僕はオースチンへ辿り着いたんです。これが、僕が30年前にも訪れたオースチンです。あとで30年前に撮った写真もお見せします。

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■オースチンの家

佐藤 この街は元々、金銀が出て人がいっぱい集まって来たんだけど、この土地に愛着を持ってしまって、そこに住み着いて離れないっていう人がたくさんいた。僕が30年前に来た時にはもっと人がたくさんいたけど、過疎化ですごく減った。

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■サルーンを見つけた!

佐藤 ここへ走り込んで来て、僕が昔行ったサルーンがあったんだよ、ここに。「あったー!」って思ってね。

北條 右側の“SALOON”って書いてある看板ですね。まだあったんですね。

佐藤 それでネオンがついてたじゃない! やったぜってね。これは今晩行かなくちゃと思って、あとはモーテル探しですよ。
 街の離れた所に行けば結構あるんだけど、それじゃあ酔っぱらえないじゃない。だから街の中で探してさ。そしたらまあ汚いモーテルが一つあったの(笑)。薄気味悪いインド人の婆さんがやっててさ。まあいいかってそこに泊まって、夜を待ったわけですよ。

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■ストーブの煙

佐藤 その前にいろいろ写真を撮ってまわってね。これがさっきのサルーンを反対側の道路から撮ったやつ。寒いからもうストーブ焚いてる。

北條 蒸気みたいなのが出てますね。

佐藤 ストーブの煙です。僕が30年前に撮った時はここにフォードの古い車が停まってた。その写真もあとで出てきます。

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■昔はホテル、今は空き家

佐藤 昔泊まったのはこの三角屋根の建物。ここはホテルだったんですよ、今はもう空き家だけど。この通りはほとんど空き家になってるね。

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■かつての活気

佐藤 これが30年前の写真。ほら、同じ建物があるでしょう。ここに泊まってた。車がたくさん停まってるでしょ。それも冬ですよ、雪があって。

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■現在の夜のサルーン

佐藤 これが今の夜ね、現代の夜。同じ所から30年前に撮った写真が、はい次。

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■30年前の夜のサルーン

北條 手前の車が先ほどおっしゃっていたフォードですか。比べると今の方が寂しいけど、ちゃんとそのままの姿で残ってるんですね。同じ店だってわかります。

佐藤 まだあります。次です。

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■30年前の酔っ払い

佐藤 30年前は、店の中はこうだった。
 この写真を伸ばして持っていったら、このグラスを掲げてる彼は今も生きてる。90歳で長老として生きてるって。
 これが当時の写真ね。次は今の店の中をお見せします。

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■現在の内装

佐藤 これですよ。全然違う。今っぽい内装でしょ。

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■陽気なひととき

佐藤 これ30年前。よかったんだよ、一緒になって飲んでさ、楽しく写真も撮らせてもらってさ。

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■逆光のカウボーイ

佐藤 ほら、いいでしょう? 30年前だよ。ロバート・レッドフォードみたいな。

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■タバコと爺さん

佐藤 こういう爺さんもいたんだよ、昔。ニコチンで手が茶色くなっちゃって。

八巻 なんか自分で巻いたタバコみたい。

佐藤 そうそう、この爺さんがこっくりこっくりやってたんだよ。とにかくいいバーだったんで絶対もう一度ここに来ようって、この時思ってたんだよ。街の姿はそのまんま残ってたからよかったけどね。

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■現代のスロットマシン

佐藤 今のバーのカウンターって、スロットマシンが組み込まれてるの。昔はスロットマシンって後ろにあって、レバーがついてガシャンッてやってたでしょ? 今は酒飲みながらボタン押して、暗くチョキチョキやって、面白くもなんともないんだよ。

北條 絶対後ろにある方がいいですよね。それじゃあみんな会話しないでこれやってるんですか?

佐藤 そう、変わったね。俺もやってみようと思ったんだけど、やり方が全然わからなくてさ。

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■現代のジュークボックス

佐藤 これが現代のジュークボックスです。

八巻 これはやっぱりコインを入れるんですか?

佐藤 だろうね。あるいはカードとかそういうのを使うのかもしれない(笑)。スマホか何かをかざすのかもしれないし。すごい変わりようだよね。

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■変わらないもの

佐藤 こういうのは昔のまんまだよ。

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■孤独で、静かで、冷える夜

佐藤 そして夜は更けていった……。誰もいないし、外歩いてる人もいない。もう寒くてね、背中丸めてモーテルまで走って帰った。寂しいでしょ?


2017年12月18日 12:00

片岡義男とも深い交流のある写真家・佐藤秀明が、30年ぶりにアメリカの地に訪れる。自身が“ロンサム・カウボーイ”となり、どこまでも続く乾いた土地を走りながら、かつての風景との違いを写真に収めていく。