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写真は語る by 佐藤秀明(1)

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帰国後すぐの2017年11月13日、セレクトされた200枚の写真が次々とスクリーンに映し出された。すぐさまスタッフが取り囲み、その語りに聞き入ってしまった。この状況をそのままみなさまへお届けしたいと思います。全5回にわたって公開していく予定です。まさに至福のひととき請け合い、どうぞお楽しみ下さい。『ロンサム・カウボーイふたたび』とは?

全5回| 12345



今回辿るルートはラスベガスルンドイーリー

文中に編集部コメントが入っています!

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ラスベガスを抜け、さあ、求めていた風景が広がり始めた

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■ラスベガスを抜けて

佐藤 ラスベガスを抜けてやっと小さな道に入った時に、ほっとして撮った最初の写真です。
 ラスベガスのインターステートは片側4車線くらいあって、みんなビュンビュン走ってる。その中でどこから出ればいいのか、ずっと出口を探しながら走るから大変なんですよ。しかも看板に行き先が書いてない。WESTとかEASTとしか書いてないから、あらかじめネットで調べてコースを自分で書いておくのが一番信用できる。
 それを見ながらインターステートをようやく抜けて、これからネバダの奥地に入っていくぞ、と。

北條 その最初のカットなんですね。

佐藤 僕、最初はイーリーという所に泊まりたくて、そこに向かってました。この辺はまだ標高が低いから爽やかで気持ちいいけど、あの正面の山を越していくからどんどん標高が上がっていくんですよ。そうするとね、9月とか10月の穏やかな気候がいきなり冬になります。

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■セージの花

佐藤 黄色い花が見えるでしょ? あれはセージです。今ちょうど盛りでね、至る所に咲いてるから、ちょっと車から降りると空気にのっていい匂いが漂ってくるの。爽〜やかな。これがネバダに似つかわしくない匂いでね。でもこれが枯れると西部劇でよく見かける、風に吹かれて転がっていく草玉になるんですよ。

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■広大な大地

佐藤 これはねえ、気分よかったですよ。延々と向こうへ行くんだなと思うと嬉しくなって写真を撮ったんです。広々とした所で、ほっとしたかったから本当に気分がよくってね。でも延々、走れども走れどもこの風景。何時間もこの風景(笑)。

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■サボテン

佐藤 サボテンの一種でしょうねえ。こういうのを見つけては車を停めて撮ったりね。ちゃんと正しいカメラマンやってました、この辺は(笑)。

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■ちぎれたタイヤ

佐藤 ここは夏になると死ぬほど暑いです。だから夏はよくタイヤがバーストして、あちこちにちぎれたタイヤが転がってたりするの。
 それと、走っている車の種類が昔と全然違うね、性能がよくて。トラックのエンジンの部分だってこの部屋の半分くらいあるんじゃないかな。ダ〜ッとでかくて。そんなのがさあ、120キロくらいで吹っ飛ばしてくるの。向こうのトラックって昼間でもライトつけているから、後ろの遥か彼方からライトが見えてくる。僕はのんびり走って写真を撮りたいほうだから、それだけでも嫌だな〜、って気分になるわけよ。それがどんどん、どんどん迫ってくるわけですよ。それがトラックだと嫌でね。

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■高い所から眺めて

佐藤 向こうはドライブインがないから、時々こうやって高い所から眺めて休んだりして、茂みに入ってオシッコしたり。
 で、僕が失敗したのはね、初日に水を買っていかなかった。ネバダの乾燥度っていうのは想像を超した乾燥をしてますから、夜寝てる時に喉がヒビ割れて血が出てくるの。口で息なんかしていたらすぐ血が出てくるんですよ。カラッカラに乾いているの。すぐ喉が乾いてくるしさあ、いや〜失敗〜っと思って。我慢しながら走ってました。

ルンドからイーリーへ出合うクルマにしびれる

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■ルンドという集落

佐藤 延々と走っていた時に、ルンドというちっぽけな集落に辿り着いたんですよ。集落があるっていうのはわかっていたけど、まあひどい集落でね。見てのとおりです。ちょっと横丁に入って、集落の中をうろうろして写真撮ったりしていたんだけど、シーンとして、古〜い車がポツーンと置いてあったりして、人が生活してる気配は全然感じられない。だけど、人は生きているんですよ、ちゃんと。家も20〜30軒ぐらいあってね。

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■道端の大木

佐藤 道端にこれがまたでっかい木なんですよ。わーと茂っていてね、なんか妙に存在感があったんで写真を撮った。それで向こうに点々と小屋みたいなものが見えるでしょう。これは牧場ですね。でも牛はいなかった。放牧のシーズンは終わったんじゃないかな。
 ここもさっきと同じルンド。前の写真に車が停まってたでしょう。そこから振り向くとこれがあった。

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■道端の大木2

佐藤 さっきのデカイ木はこれです。この中に家があるんですよ。ポツポツ、ポツポツと。

萩野 バンガローみたいですね。

佐藤 ええ。でもなかにはログキャビンみたいな立派なものもあったりしてね。ちゃんと生活をしている人がいれば家はきれいなの。だけどこれは仮住まい。ネバダには、一発当ててやろうかって来る人っていうのが多いんですよ。大体ラスベガスそのものがゴールドラッシュですからね。みんな世界中からお金目当てで来るわけでしょう? そもそもネバダっていうのはそういう州で、ゴールドラッシュに湧いた時代からず〜っと人はそういう関わり方をしている。だからここで長く住む人っていうのはなかなかいない。

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■こんな車が

佐藤 ルンドは終わっちゃったんですよ、すぐ。それで、風に吹かれながらというかなんというか、またさっきと同じような道を延々と走るでしょう? そして、イーリーに辿り着いたの。そしたらこんな車が停まっているんですよ、偶然に! 絶叫しちゃいましたね。

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■こんな車も

佐藤 さっきの真ん中に停まっていた車ですよ。最高でしょう? 信じられないよ。どの車もみんな古いんだ。赤い方が40年代から50年代くらいかな。奥の車は60年代くらいでしょう。車種は……ちょっとわからないですけど(笑)。

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■別の角度から

佐藤 ちょっと位置を変えて撮ったんですよ。いい感じでしょう? 街の風景もいいんですよ。なんかね、ちょっと古い感じがして。ただ、人が歩いてない。どこにいるんだろうってくらいにシーンとして。家の中がオフィスになっていたりするんだね。

貨物列車が止まっている古い駅を撮る

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■イーリーステーション

佐藤 さっきの駅の反対側へ回るとこういうふうになってる。いいでしょう!
 イーリーステーション。ノーザン鉄道が通っている駅なんですよ。鉄道の本線はあの山のもっと向こう、遠くの方を走っているんです。ここは今は引き込み線になっていて、車庫には昔走ってた蒸気機関車とかディーゼル車とかがちゃんと停まってますよ。それで時々動かすわけ。

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■イーリーステーション2

佐藤 ここで蒸気機関車を動かす時は、アメリカ中から人が来るらしいんですよ。アメリカのテッチャンが! それでね、冬がいいんだって。冬だとここは標高が高いから寒くて雪が積もるでしょう? そうするとね、蒸気だとか煙がウワーッと舞ってすごくいい眺めみたいだよ。
 僕が行った時は、じつは昨日走らせたんだって言われちゃって。「えーっ!?」って(笑)。

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■貨物列車

佐藤 これはね、貨物列車がず〜っと停まっていたんでね。

北條 昔、ホーボーの人たち(放浪者)はこういうのに乗っていたんですね。

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■駅構内

佐藤 ここの構内はブラブラ自由に写真を撮ったりして楽しかったんですよ。写真教室やっているみたいでさ(笑)。

北條 ブラブラしていても、とがめる人はいないんですか?

佐藤 全然平気。でもこの中で働いている人がいる。メンテナンスやっているんだよ、一生懸命に。中をひょいとのぞいたら、入ってこいっていうからさ、入って撮らせてもらった。

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■駅構内2

萩野 これはInstagramで送られてきた写真にありましたね。

佐藤 もうね、忙しかったですよ。モバイルで撮ったり、カメラで撮ったり(笑)。

萩野 線路は錆びてないですね。こんな草が生えちゃっているから廃線かと思ったけど、もしかしてまだ使われているんですか?

佐藤 もう使われてない線路ですね。近くで見るとわずかに錆びてました。

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■駅構内3

佐藤 これがね、さっき話した蒸気機関車なんかが停めてある車庫の中。アメリカのやつってのはものすごくデカイ。びっくりしちゃう。

北條 中に入れるんですね。

佐藤 いや、入れるんですけど、別に、みなさんいらっしゃいって歓迎してもらうわけではなくて、ちょっとすいません、日本から来ました……って言ってちょっと見せてもらうだけ。

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■駅構内4

佐藤 ほら、こうやって置いてあるんだよ。これもデカイ。それできれいでしょ。いつでも走らせられるように、ちゃんとピカピカに磨いてあるんだよ。

祝田 一番左は、これはラッセル車なんですか?

佐藤 いや、これはラッセル車ではないですね。ラッセル車は外にありました。もっとものすごいやつが。

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■作業中のおじいさん

佐藤 このおじいさんが頑固で、ちょっとこっち向いてくださいと言っても向いてくれないの。

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■おじいさんと同僚たち

佐藤 ほかの人はね、こうやって向いてくれるんだけど。ああ、中国人だ、とか思っているのかもしれないね。

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■線路

八巻 この線路、走れなさそうですね。なんだか、ゆがんで見える。

佐藤 これ、長い望遠レンズで撮っているからね。グニャグニャして見えるんだよ。実際はもっと距離がある。


2017年12月16日 00:00

片岡義男とも深い交流のある写真家・佐藤秀明が、30年ぶりにアメリカの地に訪れる。自身が“ロンサム・カウボーイ”となり、どこまでも続く乾いた土地を走りながら、かつての風景との違いを写真に収めていく。