VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

小説

スプーン一杯の月の光

父を「あなた」と呼ぶ娘が差し出す、スプーン一杯の光

不思議な短編である。不安定の中に
一時的にできたエアポケット、あるいは台風の眼、のようにも見えるし、
案外、これはこれでゆるぎない安定のようにも見える。
高原のコテージに複数の夫婦が集まり、その中で最も落ち着いているのは
14歳の少女であるように見える。彼女が「あなた」と呼ぶ男との関係は
このあと果たしてどうなるのか、それはわからない。
お気に入りの紅茶を淹れ、スプーンに「ほら」とばかり
月を映してみせる14歳の心の中は誰にも予測できない。

このエントリーをはてなブックマークに追加