VOYAGER

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小説

彼を愛してなにを得たか

季節がひとめぐりしたから。理由はただそれだけ

徐々に関係がまずくなるとか、短くない断絶を経て決定的にダメになるとか、そういうことではなく、なに一つ問題ないように見える瞬間に終わることもある。
例えば、春、夏、秋、冬、そしてまた春と季節がちょうどひとめぐりした、という理由で。
言い出した側が強く、言われた側が惨めだ、というわけでは必ずしもない。
夜の日本海を眺めながら夜通しクーペを走らせる、その美しい、そして悲しい時間を経験して彼女はその連続のままに、一人だけの朝を迎える。

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