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小説

昨日は雨を聴いた

堂々めぐりの言葉の果てになぜふと、唐突な言葉が出てしまうのか。

浮気。この、凡庸にして普遍的な、
みじめな、疲労感のつのる、男女間の出来事。
言葉は常に行為よりも遅れているから、
言い訳も、釈明も、解決の提示も、嘆願も、
互いの言い分も、堂々めぐりを繰り返す運命にある。
そのような倦んだ言葉のつらなりの中で、
男はふと、あらぬ言葉を口にしてしまう。
何一つ決定的な事柄にはつながらない平凡な、
しかし不思議な言葉を、ふとつぶやいてしまう。

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