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2月28日|2つの戦争|25セントの切手から学ぶ、アメリカの歴史と現在

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2月28日|片岡義男エッセイ365|25セントの切手から学ぶ、アメリカの歴史と現在

 エッセイ配達人です。

 2月の最後は、『シヴォレーで新聞配達』(1990年、研究社出版)より、アメリカの切手シリーズ「Black Heritage」の広告を紹介する一編です。

 アメリカの2月は「ブラック・ヒストリー・マンス(黒人歴史月間)」として、町のあちこちでアフリカン・アメリカンの歴史をテーマとするイベントが開催されます。なぜ2月かといえば、奴隷制廃止に尽力したリンカーン大統領とフレデリック・ダグラスの誕生日が2月だったから。1926年に”ブラック・ヒストリーの父”といわれる歴史家のカーター・G・ウッドソンが、彼らの生まれた2月第2週を「黒人歴史週間」として提唱したのがそのはじまりです。20世紀のはじめ、”アメリカの歴史”にアフリカ系の人々が登場することはほとんどありませんでした。

 今日のエッセイに登場するエイサ・F・ランドルフ(1889-1979)は、アメリカ公民権運動のリーダーとして知られる人物です。広告に刻まれた「1963年」はワシントン大行進の年。キング牧師の演説で知られるこの”マーチ”のディレクターが、ランドルフでした。


March on Washington
|ランドルフ演説3:20〜|スミソニアン博物館制作

 ランドルフは、ポーターの労働組合を結成したほか、米軍内で正規の地位のないまま劣悪な状況におかれていたアフリカ系兵士の環境改善に努めたことでも知られます。第1次世界大戦当時、戦争を地位向上の機会とすべく、すすんで従軍しようとするアフリカンの運動が起こりましたが、ランドルフはこれに対して「民主主義のために世界を安全にしたいなら、ウィルソン大統領が戦地に行けばいい。私たちは民主主義のためにジョージアを安全にする」と述べ、アメリカには民主主義の2つの戦争が存在することを訴えます。

 その後の第2次世界大戦でアフリカン・アメリカンは初めて正式に従軍することとなりますが、彼らには日米の戦いをレイシズムの観点から見る目もありました。後年の調査に「原爆投下は間違いだった」と答えた人が白人よりアフリカンのほうが2割ほど多かったという記録があります。アメリカのリアリティは日本から想像する以上に重層的なものかもしれません。

 「Black Heritage」は、1978年からつづく切手のシリーズです。毎年ひとり、アフリカン・アメリカンの文化を象徴する人物が選出されるのですが、今年選ばれたのは公民権運動家ドロシー・ハイト(1912-2010)。ランドルフとともにワシントン大行進をリードした女性のひとりです。

black heritage

 歴代の切手はこちら(stamps.org)「Black Heritage Series」。2009年までの32人を画像で一覧できます。

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今日のリンク

● African American Histroy Month.gov|アフリカン・アメリカン・ヒストリー・マンス「イメージ」のコーナー|[英語]
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● 国立郵便美術館公式サイト|ブラック・ヘリテッジシリーズ特集[英語]

● history.com|「ブラック・ヒストリー・マンス」の歴史|[英語]

2017年2月28日 13:00|編集部ブログ