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新作書き下ろし6作品を公開!

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サポータ向け書き下ろし「短編小説の航路」シリーズ『謎なら解いてみて』『Cmで低く甘く』『銀座化粧』3作品。「東京を撮る」シリーズ『世田谷代田・経堂、2019年』『経堂、2019年』『町田、2019年』3作品。を公開しました。片岡義男.comだけで読める作品です。
書き下ろし作品数がいつもより多いことにお気づきでしょうか?サポータ参加者数が400名をこえました。毎月順調にこの数は増えています。片岡義男自身、みなさまへ感謝の気持ちを伝えたいと述べています。自分にできることは、デジタル書き下ろし作品を書き続けること、そして作品を一刻も早くみなさまへお届けすることだ、と。書き下ろし作品数がいつもより多いのは、この理由からです。サポータの皆様は、サポータ本棚から作品をお楽しみ下さい。

謎なら解いてみて

『謎なら解いてみて』
「謎なら解いてみて」というタイトルの、喫茶店を巡る冒険です。この短い物語の中で、代々木上原、下北沢、豪徳寺、下高井戸という狭いエリアの中で、主人公のライター、藤崎浩はドトールのミラノサンドを巡る小さな謎を解くという発端から、喫茶店に入るごとに、次々と物語に巻き込まれていきます。昭和の東京の住宅街の生活に密着した喫茶店文化を背景に、街が謎をはらみながら、新しい時代へと順応しようとしている、その動きそのものが「謎」なのでしょう。その中で、いつもと変わらぬ美味しいコロッケ屋さんがいつものように登場するのも、また謎の一つなのかも知れません。


Cmで低く甘く

『Cmで低く甘く』
このシリーズの裏テーマではないかと思われる「コロッケ」が大きくフィーチャーされた物語です。しかも、遂に、美味しいコロッケの具体的な作り方にまで言及されています。1978年という、あと少しで時代が大きく動く昭和の後期、新しい美味しさへと町の惣菜屋のコロッケが進化していく、そのドキュメンタリーのような物語。その変化をもたらすのは、都会的なサックス奏者であり、浅草の洋食屋の娘で、Cmで低く甘く囁き、キッパリと主張する26歳の女性。そこにもまた、1980年に大きく動く昭和の終わりを目前にした時代の東京のリアルがあると思うのです。


銀座化粧

『銀座化粧』
沢山の昭和歌謡の歌手や曲名、ポップスやジャズのミュージシャン名などが登場します。さらに、銀座のグリルや名古屋の稲荷寿司の名店「豆狸」や、モンサンミッシェルの有名なビスケット「ラ・メール・プラール」のサブレといったコモノの情報も飛び出し、さらによく読めば、この物語は、2019年の秋、つまり今現在リアルに進行中の物語であることまで分かるように書かれています。つまり、現在の東京の現在を生きる二人の女性デュエットの「今」を、それらの膨大な量の情報によって描写するという手法の物語なのです。そして嬉しいことに、今なら登場する音楽も食べ物も、すぐに触れることができます。物語を挟んで、情報のやり取りができる面白さを味わえる訳です。(そういえば、「ケチャップが赤く笑う」に出てくる女性デュエットと、今回登場する彼女たちはよく似ていますが別の人たちのようです)


東京を撮る15 世田谷代田・経堂、2019年

『東京を撮る15 世田谷代田・経堂、2019年』
地上にあったホームが地下に移動するというのは、そこにあった線路や踏み切りもなくなるわけで、それは駅だけでなく、街の風景を大きく変えてしまいます。ここ数年、小田急線沿線ではいくつもの駅で、街の様相が変わって、そこにあったはずのものはなくなり、しかし、新しい街がまた生まれようとしています。今回の「東京を撮る15 世田谷代田・経堂、2019年」では、つい数カ月前に撮られた、既に大きく変わってしまった世田谷代田の駅を含む街の風景と、新しい珈琲店、そして、未だかつての東京の匂いを色濃く残す経堂のすずらん通りの様子が撮影されています。ほんの数駅の、しかし、線路がまだある街と、もうない街の対比は今の東京の風景なのでしょう。


東京を撮る16 経堂、2019年

『東京を撮る16 経堂、2019年』
片岡義男氏の「東京を撮る」シリーズには繰り返し、食品サンプルの写真が登場します。また食品サンプルの脇に添えられた値札の方が主役になっている場合もあります。現在、次々と新しくできる飲食店の店頭に食品サンプルが置かれることはまずなく、多分、これらもまた、「一時期はどこにでもあったけれど、いつの間にかなくなってしまう」風景の一つなのでしょう。特に、値札は、食品サンプルがアートとして残ったとしても、機能として失われてしまえば、食品サンプルよりも先に消えてしまいます。そこに書かれた価格は、もっと速く、時勢と共に消えていくでしょう。今回の「東京を撮る」で、壊れたカメラが、それらの風景を撮ることができたというのは、なんとも印象的です。


東京を撮る17 町田、2019年

『東京を撮る17 町田、2019年』
「東京を撮る」シリーズをずっと見ていると、気がつくのは、片岡義男氏の写真の中では、階段がまるで「境界」のように見えるということです。そして、矢印は境界へのサイン。ドアや上がり框もそうです。それらは街に引かれた境界線。そして、看板やPOP、ポスター、食品サンプルといったモチーフは、街が残した時代のサインなのではないかという気がしてきます。今ではない何時か、誰かに向かってがっせられたサインも、今、底を歩く人に向けて発せられたものも、平気で混在して、しかし片岡氏の写真は、多く過去発せられた、今は受け取る人が限られたサインを敏感にキャッチしているようです。特に今回の「東京を撮る17 町田、2019年」は、そうしたサインに溢れているように思えます。


また、これまでサポータのみに公開していた「短編小説の航路」シリーズのうち、『ひとりで炒飯を食べる』、『半熟卵ふたつ』、『なぜあんなに黄色いの』の3作品を販売開始し、サポータでない方でもお求めいただけるようになりました。

ひとりで炒飯を食べる半熟卵ふたつなぜあんなに黄色いの

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2019年10月24日 22:28|電子化計画