884編公開中。 今を映す手鏡のように
5月 の一覧
2017.5.10
ノートブック
縦書き
 五月はじめのタヒチ。快晴の一日がほぼ終わり、太陽が海に沈む時間がはじまろうとしていた。  ホテルのプールサイドから、人々は部屋にひきあげていた。シャワーを浴びてひと休みしてから、夜の服に着がえるのだ。  プールのわきに…
2016.6.20
太平洋の海底地図を見ながら
 朝のうちは、薄曇りだった。午後二時をすぎて、空をおおっている雲の色が、いちだんと濃くなってきた。  いまか、いまかと、ぼくは空をあおいでいた。空をいちめんにおおっている濃い灰色の雲のさらに下を、ちぎれ雲が風に乗って走っ…
2016.5.31
雨の午後、コーヒー・ショップで
 いまは雨の日の午後だ。五月の終りちかい。春のおしまいなのだろうか、それとも夏のはじまりなのだろうか。むしあつい。しかし、いまぼくがいる場所は、涼しい。空気もそんなに湿ってはいない。ここは、東京という都会のまんなかにある…
2016.5.12
このとおりに過ごした一日
 五月なかばのよく晴れた日。高校三年生の僕は、自宅にあったすべての教科書を入れた鞄を持って、ひとりで駅に向けて歩いていた。教科書をすべて鞄に入れたのは、時間割りがどこかへいってしまい、その日の授業がなにとなにだったか、わ…
2016.5.10
またたく星が、にじんでこぼれる
 五月のはじめにアメリカから友人が日本に来た。ぼくの家に泊まった初日の夜、彼はベッド・ルームのベッドの、二段になったマットレスの上段だけを居間に持って来て、ぼくは今夜はここで寝る、と言った。  居間は、かなり広い。そして…
2016.5.5
菖蒲湯そして乾杯
 端午の節句には京都にいた。なんの用件も目的もないまま、ただでかけてみたくなってやってきた京都だった。イノダでコーヒーを飲めばそれで充分だというような、一泊するだけの小旅行だ。  イノダでは、たしかにコーヒーを飲んだ。三…