972編公開中。 今を映す手鏡のように
2018年 の一覧
2020.7.2
風がそこに吹いている
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1  そこにいるのは自分ひとりだけという他に人のいない状態を寂しいと言うなら、それはlonesomeだよと、英語で説明されたのは、僕が六歳くらいのときだ。この説明を聞いてlonesomeはよくわかったが、自分では使うこと…
2020.6.26
電車に乗れば英語の勉強
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 平日の午後、いつもの私鉄の電車に乗る。空いている時間だから座席にすわり、ぼんやりしていると、車掌のアナウンスをなんとなく聞く。次の駅の名を告げたあと、「左側のドアが開きます」と彼は言う。続いて外国の女性による録音メッセ…
2020.6.19
英字表記による日本語
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 二〇一七年の五月だった、と思う。町田の東急百貨店の東側の建物の正面に回廊から入ると、そこはその建物の二階だ。いくつもの店子がスペースを得てそれぞれに店舗を構えて営業している。その形態はいまも全館にわたっておなじだ。二階…
2020.6.18
日常的な日本語の語句の、きわめて勇敢な英訳
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 僕はうれしい。なぜかと言えば、じつに素晴らしいからだ。これを喜ばずにいることが出来るだろうか。慶事だと言ってもいい。それほどの出来ばえだ。五目炒飯という日本語を英語にする必要にかられた二十代の日本の女性が、ごく当然のこ…
2020.6.17
WINTER SPECIAL SALE MAX 50%OFF
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 一九五六年の年末に近い時期に、板橋区にいまでもある大山銀座という商店街で撮影された一点の白黒の写真が、『東京人』という雑誌の二〇一八年四月号に掲載されている。いま僕はそれを見ている。いまから六十一年前の板橋区の商店街の…
2020.6.16
パーマの帝国
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「パ」と「マ」のふたつの片仮名に、音引きの縦棒「ー」を一本加えて作る「パーマ」という言葉は、まだ充分に現役であるようだ。太平洋戦争が終わるのとほとんど同時に、この言葉が日本じゅうに広がった。戦後の日本でいっせいに始まった…
2020.6.11
珈琲に呼ばれた
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1「旅と、音楽と、珈琲と」 『珈琲が呼ぶ』という本は二〇一八年の一月に発売された。編集を担当して一冊の本にまとめた篠しの原はら恒つね木きさんが、最初に僕に見せたエッセイは、鴻こうの巣す友ゆ季き子こさんによるものだった。題…
2020.4.22
タイプライターで原稿を書くとき
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 写真に撮られたアーネスト・ヘミングウェイは何点も見た。すべて記憶は曖昧だが、一点だけいまでもはっきり覚えている写真がある。ハヴァナの自宅で撮影された彼のうしろ姿の全身だ。  壁に寄せて小さな四角いテーブルがあり、その上…
2020.4.8
What’s he got to say?
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 No Direction Homeは二〇〇五年にマーティン・スコセッシのコピーライトになっているドキュメンタリー映画だ。日本語の題名はないようだ。たとえば「帰路無道標」と表記して、音声では「ノー・ディレクション・ホーム…
2020.3.5
ミッキーマウスの両耳
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 ミッキーマウスをふたつ買った。ふたり、と言うべきか。ひょっとして、二体か。あるいは、二匹。上半身の高さが十一センチほどなので、ふたつでいいのではないか。良く出来ている。赤い半ズボンから黒くて細い脚が出ていて、その先端は…