972編公開中。 今を映す手鏡のように
電車 の一覧
2020.6.29
あるのか、ないのか
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 ある、という日本語について考えてみた。問題とされているその物がどこかに存在していることを、ある、と言う。この、ある、の反対は、ない、というおなじくひと言だが、ありません、という言いかたが日本語には、ある。ある、という状…
2020.6.26
電車に乗れば英語の勉強
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 平日の午後、いつもの私鉄の電車に乗る。空いている時間だから座席にすわり、ぼんやりしていると、車掌のアナウンスをなんとなく聞く。次の駅の名を告げたあと、「左側のドアが開きます」と彼は言う。続いて外国の女性による録音メッセ…
2020.6.23
すでにそうなってそこにある
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 一九四九年に製作された『黄色いリボン』というアメリカの西部劇が日本で公開されたのは一九五一年、昭和二十六年のことだった。二〇一九年から振り返ると六十八年前だ。対日講和条約と日米安全保障条約のふたつが調印された年だ。『黄…
2020.6.12
読売新聞、金曜日夕刊
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1  義  自分の名前にある義という字について。男のこが生まれたらヨシオにしよう、と父親は考えていたが、彼は漢字のまったく書けない日系二世で、音声としてのヨシオを好いていただけだ。漢字をみつくろったのは母親だ。ヨシオのヨ…
2020.3.19
僕の肩書は「お利口」
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 その日の僕は中学校三年生だったと思う。いまから何年前だろう。原節子が女優として現役だった頃、というほどに昔だ。彼女は三十代だった。現役だから彼女は仕事をしていた。仕事とは撮影所で女優として撮影カメラの前に立ち、さまざま…
2020.3.3
秋の雨に百円の珈琲を
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 十月初めの平日、雨は朝から降っていた。昼前に窓から外を見たら、雨はやんでいた。たたんだ傘を持って人が歩いていた。雨は降ったりやんだりの一日なのだ、と僕は思った。夕方近く、自宅を出ていつもの私鉄駅へ歩いていくとき、僕は傘…
2017.6.8
白い、半袖のシャツ
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「あれから、十二年?」  と、彼女がきいた。 「たいしたこと、ないよ」  ぼくが、答えた。 「そうね。それほどの時間ではないわね」  十二年が経過しても、ぼくは昔のままだ。彼女も、変化のない部分はそのままだが、変化をきた…
2017.4.28
今日も小田急線に乗る
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 小田急線の駅名のなかに「ヶ」という片仮名が六つある。そのうちの四つは花と関係している。その花とは、新宿のほうから順に、梅、百合、そして桜だ。百合はふたつならんでいる。「ノ」と言う片仮名がひとつ。これは片瀬江ノ島だ。「ラ…
2016.6.18
海苔を巻いたおにぎりの謎
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 つい先日、残暑が続く平日の午後、いつもの私鉄の電車に乗って、僕は新宿に向かった。空いている席があったので僕はそこにすわった。電車のなかで僕は本を読んだりしない。その反対の居眠りもしない。いっぽうの極に読書があり、もうい…
2016.4.17
海岸にて、というタイトルでなにか書いてください
 いつもの街で、ふたりは昼すぎに会った。四月十七日、気温の高い、気持ちよく晴れた美しい日だった。海岸へいってみようか、と彼が提案した。彼女は賛成だった。夜までには町へ戻り、ふたりでタ食を楽しむことにして、ふたりはすぐに駅…
2016.3.2
女性たちがニューヨークへ消えていく
 ぼくの身辺から、女性の友人たちが次々に消えていく。十七年まえから現在にいたるまでのあいだに、七人の女性の友人たちが、いなくなった。七人ともすべて、東京を捨ててニューヨークへいってしまったのだ。  十七年まえに、ぼくの女…
2015.11.26
青春映画スターとの再会
 秋のある日、彼は仕事の一部として、一本の映画を配給会社の試写室で見た。上映がはじまるまえ、配られた資料を見るともなく見ていた彼は、その映画の配役のなかにひとりの女優の名をみつけた。  カタカナで書いてある彼女の名を見た…