972編公開中。 今を映す手鏡のように
道路 の一覧
1 2
2017.9.19
『パリ・テキサス』を観た
縦書き
 空中から撮影した荒野が画面に映る。その荒野のなかを、ひとりの男が歩いている。いったいこの男になにごとが起こったのだろうかと、スクリーンを観ている人は思う。ここから、この映画はスタートする。  荒野をひとりで歩いて来たそ…
2017.7.11
ミッキーマウス・カントリー
縦書き
 ミッキー・マウスの帽子をぼくはまだ持っている。ずいぶん昔に買った帽子だ。なにしろディズニー・ランドが開園してまだ六年ぐらいしかたっていないころ、ディズニー・ランドのギフト・ショップで買ったのだから。  この帽子は、じつ…
2017.6.29
彼女が雨を見る態度
縦書き
 1   秋の雨の頃、仕事の帰りに彼女は京都に一泊した。京都は雨だった。その雨の京都から、彼女は、親しい友人に宛てて、絵葉書を出した。絵葉書に彼女は次のように書いた。 『雨の京都で蛇の目を買いました。さっそく、それをさし…
2017.6.6
道路の小説を書きたい
縦書き
 ぼくは日本の地形と気候が好きだ。地形も気候も、ともに独特であり、このふたつが重なりあった日本は、興味がつきない。  この小さな列島は、亜寒帯から亜熱帯にまで、わざわざまたがるのを意図したかのように、細長い。複雑な海岸線…
2017.5.15
『江戸でシャンペイン』
縦書き
 僕がこの文章を書いているいまは、一九九五年の十二月だ。ついでに日付と時間を書いておこう。十五日の午後五時三十分だ。いまとはいったいいつなのか、はっきりさせておきたい、と僕は思う。このいまから見て、僕がもっとも最近になっ…
2017.2.23
記号を頼りに旅をはじめる
 ランド・マクナリーの道路地図だ。アメリカ合衆国を自動車で旅行するとき、この地図は欠かせない。旅行するたびに、あるいは、新しい版が出るたびに買っているから、すでに何十冊もたまっている。  人間が作ったハイウェイや町なども…
2017.2.2
アメリカの小さな町
 ハイウェイから離れて、田園地帯の中の二車線の道路を行く。あたりは、絵に描いたような美しさだ。  ゆたかな緑が広がり、空気はきれいで、道路には、ぼくたちの乗った自動車しか走ってはいない。  道路の脇に、町の名を書いた標識…
2016.10.17
ぼくの好きな大空間
 最初に北アメリカ大陸を西から東へ自動車で横断したときは、その横断になんの目的もなかった。とにかく、ただ、横断してみたかったのだ。  あの広大な大陸は、地形が複雑だ。気象もそれに応じて変化する。この、地形と気象の変化だけ…
2016.9.24
悲しき雨音
 雨が降っている。九月の終わりの、何曜日だろう。何曜日でもいい。雨の日なのに、空気はとてもさらっとしている。秋だ、さすがに。空気が、肌にとても心地よい。  雨の香りがしている。  午後だ。何時ごろだろう。何時でもいい。午…
2016.8.26
ラスト・アメリカン・カウボーイ
 夏の終わりちかく、カンザス州のどまんなか。  どの方向に見渡しても、地平線までまったいらな、農業国アメリカの、途方もなく広い畑だ。  早朝なのに、青い空には熱い太陽が、すでにかんかん照りだ。  大地からは、水蒸気が、も…
2016.8.19
ステーション・ワゴン
 十六歳の夏に、父親が、三千六百ドルでステーション・ワゴンの新車を買った。  夏休みのある日、父親は、仕事の用で、大陸の東側へ、飛行機でいった。  父親の部屋に入り、ロールトップ・デスクのうえを見ると、キーがひとつ、キー…
2016.7.5
ミスタ・マスタード|アビーロードのB面
「お若いの、今日も元気かい」  公園の浮浪者が、低い位置から彼にいきなり、声をかけた。  彼は午後の公園をひとりで歩いていた。空は灰色に曇っていた。雨は降っていないのだが、今日も彼はシャツの上に木綿のレイン・コートを着て…
1 2