972編公開中。 今を映す手鏡のように
祖父 の一覧
2020.5.18
父親に間違えられた僕
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 いまから三十年以上前、僕は僕の父親に間違えられたことがある。僕を僕の父親だと思った人がいたのだ。  ラハイナ・ショッピング・センターの奥のほうに、いまはもうないかと思うが、かつては小さな食堂があった。建物の一角にあるそ…
2020.4.16
僕の父親はDadだった
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1  自分のことをDadと呼べ、と父親がはっきりと僕に言ったときのことを、遠い思い出ではあるけれど、いまでも僕は覚えている。戦後すぐのことだった。当時の僕は五歳ないしは六歳で、ちょうど物心がついた年齢だった。  自分の父…
2017.7.31
海から見る自分の居場所
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 瀬戸内の海からその港へ入っていくとき、視界に広がる景色というものを、現在の地図を見ながら僕は思い描いている。最近の地図を見ながらだから、思い描く景色は現実にかなり近いものとなっているはずだ。海に突き出た埋め立て地が、港…
2017.1.9
僕にとっての個人的なスタンダード
 いまから百年前、おそらくまだ青年の名残をとどめていた年齢の頃、僕の祖父はハワイへ渡った。僕の父親はハワイで生まれてそこで育ち、カリフォルニアその他で成長の仕上げをした。ハワイとアメリカの日系人社会が、幼い頃から僕の身辺…
2015.12.7
チャタヌーガ・チューチュー
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 朝のまだ早い時間なのに、居間はもう暑かった。陽がさしこんだりはしないのだが、むっとするような空気がこもっている。  新聞を持った徳一は、居間からキチンへ歩いた。  キチンは北側にあり、この小さな家のなかでは、たいていの…
2015.10.21
祖父のポケット・ナイフ
 いまぼくはこのみじかい文章を、お気に入りの原稿用紙に鉛筆で書いている。鉛筆は、いつものステドラーの5Bだ。原稿用紙のすぐわきには、ポケット・ナイフがひとつ、置いてある。このポケット・ナイフについて、ぼくは書こうと思う。…