972編公開中。 今を映す手鏡のように
短編小説 の一覧
2020.6.12
読売新聞、金曜日夕刊
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1  義  自分の名前にある義という字について。男のこが生まれたらヨシオにしよう、と父親は考えていたが、彼は漢字のまったく書けない日系二世で、音声としてのヨシオを好いていただけだ。漢字をみつくろったのは母親だ。ヨシオのヨ…
2020.6.5
残りご飯のバター炒めと海苔の佃煮
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 一枚の写真が、なんらかのかたちあるいは意味で、物語のなかで重要な役を果たす短編小説をいくつか書き、一冊の本を作ってみたい、といま僕は考えている。物語はみな多様なものになるだろう。どのような物語をどんなふうに構成し、それ…
2020.4.22
タイプライターで原稿を書くとき
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 写真に撮られたアーネスト・ヘミングウェイは何点も見た。すべて記憶は曖昧だが、一点だけいまでもはっきり覚えている写真がある。ハヴァナの自宅で撮影された彼のうしろ姿の全身だ。  壁に寄せて小さな四角いテーブルがあり、その上…
2020.2.21
長いつきあいはまだ続く
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「ピーナッツ」のコミック・ストリップを最初に読んだのは、まだ子供だった頃だ。父親の仕事の関係で、アメリカの新聞や雑誌、そして書籍が、雑多に大量に、いつも自宅にあった。そのような新聞で見かけて、ふと読んでみた。ひょっとした…
2018.3.16
短編小説はどうなっているのか
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 O・ヘンリーというアメリカの作家は、かつては日本ですら知らない人はいなかったほどに、著名な存在だった。独特なひねりの効いた、読みやすくわかりやすい短編小説で名をなした人だ。『最後の一葉』や『賢者の贈り物』といった短編を…
2018.2.28
うかつに紀行文を書かないように
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 一九一五年のアメリカで、『ザ・ベスト・アメリカン・ショート・ストーリーズ』という題名の短篇集が刊行された。その年のアメリカで発表された短篇小説を可能なかぎりたくさん集めて読み、そのなかから傑作とうたうにふさわしいものを…
2018.2.7
「グレーテスト・ヒッツ」
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 昨年の夏、真夏日の夕方、僕はひとりで新宿を歩いていた。新宿駅の南口から道を渡り、サザン・デッキとかいう通路をその奥に向かいながら、僕の頭のなかには、とりとめなくいろんなことが浮かんでは、消えていた。前後の脈などまったく…
2018.1.31
「フオー・ラブ・オブ・ザ・ゲーム」
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 マイケル・シャアーラのこの小説の書評がかつて『ロサンジェルス・タイムズ』に掲載された。その書評のなかのひと言が、写真にあるペーパーバックの裏表紙に、宣伝文句として引用してある。「アーネスト・ヘミングウェイが野球をテーマ…